兼六園に隣接して、石川県立美術館と国立工芸館があります。
国立工芸館とは、東京国立近代美術館工芸館が2020年に金沢市に移転したもの。
両館で開催中の「皇居三の丸尚蔵館収蔵品展 皇室と石川 - 麗しき美の煌めき -」を観てきました。
皇居三の丸尚蔵館(東御苑)は、開館30年を期にリニューアルし11月に部分開館。 先日行ったけど、まだ工事中だったので、収蔵品を巡回展示しているのかな。 内容は、三の丸尚蔵館収蔵品に、石川県立美術館、国立工芸館、(公財)前田育徳会等所蔵の作品を加えた約120点を、県立美術館と国立工芸館の二会場で展示。 皇室の至宝 皇室に伝わった石川の美術、工芸 加賀藩前田家からの献上品や石川出身の人間国宝の作品など。 【皇室と加賀前田家】 国宝 刀 無銘正宗(名物 太郎作正宗) 鎌倉~南北朝時代 前田育徳会所蔵 徳川家の家臣 水野太郎作正重が所有していたもの。 徳川将軍に献上され、徳川家の養女が加賀藩主に輿入れの際、引き出物として下賜された。【皇室の至宝】
国宝 動植綵絵さいえ(部分) 伊藤若冲じゃくちゅう(1716-1800) 三の丸尚蔵館所蔵 当時の最高品質の画絹や絵具を惜しみなく使用したため、200年以上たった現在でも保存状態が良く、褪色も少ない。
当時の絵画は、屏風絵や絵巻など、物語を描く平面的な作品が多かった。 しかし、伊藤若冲は、動植物などの対象に焦点を当て、実物写生を基に独特感性で色彩を加え華麗な作品を数多く描いており、見応えがある。 西洋画と比べても、フランスのジャック=ルイ・ダヴィッド(1748-1825)より半世紀早く、こうした作品を生み出しており、感心する。 【皇室に伝わった石川の工芸】 鶏置物にわとりおきもの 1892年 由木尾雪雄ゆきおゆきお(1860-1929)三の丸尚蔵館所蔵 実物大の木製漆塗。作者は金沢生まれ、加賀藩お抱えの蒔絵師の父から蒔絵まきえを学ぶ。1900年のパリ万博で金牌受賞。 蒔絵鷺文飾筥まきえさぎもんかざりばこ 1961年 松田権六ごんろく(1896-1986) 国立工芸館所蔵 宮内庁が制作委嘱。大きく羽を広げた鷺の白さが、黒漆の中で際立つ。 作者は金沢市生まれ、東京藝術大卒の人間国宝。「漆聖」と呼ばれた技術を持つ。輪島市漆芸研修所(現・県立)設立など後進の育成、漆芸文化継承に尽力。人間国宝の室瀬和美(1950-)氏は、東京藝術大で松田権六氏に師事し、蒔絵をはじめ漆芸技法を習得。
国立工芸館の外観。 国立工芸館が金沢市に移転した理由は、地方創生と東京一極集中是正、政府関係機関の地方移転の中で、石川県が東京国立近代美術館工芸館の誘致し実現。石川県は「工芸王国」とも言われ、陶芸や漆芸、染織などの産地を抱え、国立工芸館の移転は地域の文化振興や観光振興に寄与すると。
施設は、旧陸軍の建物を移築・増築し、レトロクラシック。金沢出身の蒔絵師松田権六の仕事部屋が移築展示され、地元出身の工芸文化を引き立てている。
このあと、さらに石川の文化を探ることに。